日常生活の中での転倒やスポーツ、自転車の事故などで「あごを強打してしまった」
という経験はありませんか?
受傷直後は「打撲しただけだから冷やせば治るだろう」と思っていても、時間が経つにつれて
以下のような症状が出てくることがあります。
⚫️口があまり開けない(開口障害)
⚫️奥歯が当たらず、前歯しか噛み合わない
⚫️いつもと噛み合わせの位置がずれている感覚がある
⚫️口を開閉すると耳の前あたり(あごの関節)が激しく痛む
もしこのような症状が出ている場合、単なる「打ち身」ではなく、骨や関節に深刻なダメージが
及んでいる可能性があります。今回は、あごを強打した後に生じるトラブルの原因と、
受傷時の初期対応について詳しく解説します。
なぜ「口が開かない」「噛み合わない」状態になるのか?
あごの先端(オトガイ部)などを強くぶつけると、その衝撃はあごの骨を伝わって耳の前にある
「顎関節(がくかんせつ)」や頭蓋骨方向へと逃げていきます。そのため、ぶつけた場所とは別の
場所に問題が起きることが珍しくありません。
主な原因として以下の4つが考えられます。
① 下顎骨骨折(かがくこつこっせつ)/下顎頭骨折(かがくとうこっせつ)
衝撃により、下あごの骨や、耳の付け根近くにある「下顎頭(あごの関節の突起部分)」
にヒビが入ったり折れたりしている状態です。骨折によって骨の位置がずれると、
劇的に噛み合わせが変化します。
② 顎関節脱臼(がくかんせつだっきゅう)
衝撃や打撲の反動で、あごの関節の骨(下顎頭)が関節のくぼみから外れて戻らなく
なっている状態です。「口が閉じられない」「顎が前に突き出たままになる」といった症状が見られます。
③ 顎関節捻挫・関節内出血
関節周囲の靭帯や関節円板(クッション組織)が強く圧迫・損傷され、関節の中で炎症や内出血を
起こしている状態です。腫れや血液が溜まることで顎が押し出され、一時的に噛み合わせが狂うことがあります。
④ 筋肉の強い炎症・緊張(筋スパズム)
強い衝撃や痛みを防御しようと、あごを動かす筋肉(咬筋や側頭筋など)が強く硬直(スパズム)し、
口を開けられなくなるケースです。

ステップ1:全身状態・頭部症状の確認(最優先)
あごを強打した場合、頭部や脳にも強い衝撃が加わっています。
もし以下のような症状がある場合は、歯科ではなく直ちに救急車を呼ぶか、
脳神経外科・救急外来を受診してください。
意識がもうろうとしている、気を失った
吐き気・嘔吐がある
激しい頭痛、めまい、ふらつきがある
ステップ2:無理に動かさず「安静」を保つ
「噛み合わせがズレているから」と、無理に元の位置に戻そうとしてカチカチ強く噛んだり、
無理やり大きく口を開けようとしたりしてはいけません。
骨折や靭帯の損傷が悪化する恐れがあります。
ステップ3:冷やす(アイシング)
腫れや痛みを抑えるため、氷嚢や保冷剤を清潔なタオルで包み、患部(痛むあごや耳の前あたり)
を外側から冷やします。
ステップ4:歯やお口の中の確認
歯がグラグラしていないか、折れていないか、歯茎から大量に出血していないかを確認します。
そのまま放置するとどうなる?
「痛みが少し引いたから」と放置してしまうのは非常に危険です。
変形治癒(骨がズレたまま固まる): 噛み合わせが二度と元に戻らなくなり、正常に
食事ができなくなる原因になります。
顎関節強直症(がくかんせつきょうちょくしょう): 関節内の出血や骨折部が癒着し、
あごが完全に開かなくなる重篤な後遺症が残ることがあります。
何科を受診すべき?
あごの打撲、開口障害、咬合異常がある場合は、「歯科口腔外科」を標榜している歯科医院
または総合病院の口腔外科をできるだけ早く受診してください。
歯科医院では、パノラマレントゲンや歯科用CTを撮影することで、目視では分からない
関節内部や骨折の有無、歯根の破折などを詳細に診断することができます。
まとめ:違和感があればなるべく早めに受診を
転倒によるあごの強打後、「口が開かない」「噛み合わせが合わない」と感じる場合、見た目以上に
骨や関節へダメージが及んでいるサインです。
早期に適切な固定や治療を行えば、後遺症なくきれいに治る可能性が高くなります。


























